鍵っ子だった私と祖父母とを繋ぐファックス

私がまだ子供だった頃、両親は共働きだったので家にはいませんでした。
そのため学校から帰ってくるといつも誰もいない家で一人で過ごしていました。
いわゆる鍵っ子だったんです。

 

宿題をしたり、テレビをみたりして両親が帰ってくるのを待ちました。
もちろん大きくなってからは外へ遊びに行ったりもしましたが、小学校低学年の小さいうちはずっと家で過ごしていたように思います。

 

祖父母が近くに住んでいれば良かったのでしょうが、遠方の他県に住んでいました。
祖父母は私のことがとても心配だったのだと思います。
学校から帰ると、いつも祖父母からのFAXが届いていました。

 

「○○ちゃん、おかえりなさい。今日も楽しかったかな」と。

 

それほど複雑なやりとりではなく、とてもシンプルなものです。
それが本当にうれしかったんです。
家には誰もいなくても、私が無事に帰ってくることを待ってくれている祖父母がそばにいるようで。

 

そのFAXを確認した後に祖父母に電話をするのがいつの間にか日課となっていました。
鍵っ子であった私にとってFAXは祖父母との大事なコミュニケーションツールでした。

 

時には似顔絵を描いて送ったり、時にはお誕生日おめでとうのメッセージを贈ったり。
難しい漢字が書いてあったときは、辞書で調べるので感じの勉強にもなりました。

 

子どもだった私は自分の書いた字が遠くに住んでいる祖父母の元にすぐに届くのが不思議で仕方ありませんでした。
私にとって祖父母とのFAXのやり取りは忘れられない思い出となっています。